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目を背けることなく

セクシャルアビューズ―家族に壊される子どもたち (朝日文庫)
 私が読んできた本の中で、読後の後味の悪さといったら指折りの一冊です。本書を読んだ後しばらくは、どうも憂鬱な気分が抜けず、それは読み返すたびにまた新たに襲ってくる。まったく、ボディーブローのような腹に来る重さです。

 それは、子供への虐待。しかも性的なそれを本書が主題としているからにほかなりません。ここに語られている著者の取材の結果は、将に戦慄すべきというのがぴったりです。しかもそれが非常に淡々と語られているのがとても恐ろしい。殴る蹴るの虐待なら、昨今よく取り上げられ、社会問題として知られており、それに対する認知もある程度行われているように感じますが、親が子を犯す、このような類の虐待はニュースではほとんど見ません。認知しようにも生理的にそれを許さない、というところがあるのでしょう。ただの暴力なら客観的に見られることでも、性的な問題となると何か眉をひそめるだけではすまない部分が、私たちの中にはあるように思えてなりません。どこか他人事では済ませれないものを感じて、「無かった事」にしてしまいたい衝動に駆られる。

 しかし、本書はそんな企てを水滴が岩を撃つように削り取ってしまいます。それでもあなた、見ないことにするのですか?とじわじわと迫られて、読んでいるうちに直視せざるを得なくなり、読んだ後はへとへとになってしまっているのです。ルポタージュであり、体系的に性的虐待について論じているわけではありませんが真に迫っていると感じました。

 本書を手に取った人がみな虐待に対して立ち上がる必要は、必ずしも無いと思います。しかし、著者も言われているように、ひょっとしたらあるかもしれない、という意識は重要です。私たちの精神衛生を維持するために捧げられる人身御供は、一人でも減らさなければいけない。
引用元:目を背けることなく

セクシャルアビューズ―家族に壊される子どもたち (朝日文庫)
良くも悪くも、人間というものありようを余すことなく書き尽くしている。
宗教的側面はないにしても、「カラマーゾフの兄弟」を初めて読んだ時のような衝撃を受けた。

どんなに上辺を飾ってみても、僕らは一皮むけば同じように血と骨で出来ている生物に過ぎない。
圧倒的な欲望や暴力も、僕らの誰の裡にも潜んでいるのだ。
それは、戦争や飢餓などの極限状態に置かれた時、くっくりと浮き上がる。

人間の本質から目を背けて、ヒューマニズムや道徳を語っていても、説得力はない。ここに描かれているような生き方や暴力の世界を肯定するわけではないけれど、まずはこれが人間だということを考えるいいきっかけになる。
そういう本だった。
引用元:

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