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本当に創業家にありがちな悲劇と片付けていいのか

三洋電機 井植敏の告白 (日経ビジネス)
いろいろなエピソードや関係者の証言を交え、三洋電機や井植敏氏の生い立ちや
人となりにも触れ、井植敏氏から寄せられた回答に突っ込みを入れてさえいる。
また、創業家とメインバンクが係わったエピソードにも触れ、メインバンクの果た
した役割に言及し、批判してもいる。
日経ビジネスがこんな本を出版するのかと思わせる、単なる「よいしょ本」にはな
い読ませる本になっていると思う。

しかしながら、単に三洋電機の低迷は創業家とメインバンクが招いたというテーマ
であるならば、逆に創業家でない世の企業経営者への「よいしょ本」ではないのか
と勘ぐりたくなる。
そして、三洋電機の関係者なら、紹介されているエピソードを自分の記憶で組み合
わせながら読み解く面白さはあるが、三洋電機のことをあまり知らない読者にはス
トレスが大きいのではないだろうか。

また、登場する三洋電機の従業員が「飯炊き親父」だとか、ちょっと人の良い、あ
る意味で経営者に都合のよい、職人気質の人々に偏っている印象を受けた。
その点、現場の社員の生々しい声や怨念に欠ける内容ではないだろうか。

当時、絶頂期を通じて抱えていた1兆4千億円とも言われた有利子負債の存在が社
員に極秘であったワケではない。
それは中越地震での半導体工場への被災が凋落への引き金ではないという書き方で
描かれてはいる。
しかし、定年を迎えた多くの古参の社員たちが、巨額の有利子負債を減らせないで
いる創業家とメインバンクに恨み言を残し、あるいは企業年金の存続を危ぶみなが
ら去っていったのではないだろうか。

そこには、直接原価計算でコストを把握して利益を捻り出そうとする現場の社員た
ちと、全部原価計算での数字のマジックを恣意的に用い、余計なことに投資を続け
た経営陣という、日本の製造業における普遍的なテーマが隠れていたのではないだ
ろうか。

井植敏氏が副社長に招いた住銀出身の古瀬氏の話に絡んで、井植敏氏が財務コンプ
レックスだという話が紹介されていた。
しかし、そんな財務コンプレックスを持つ人物が三洋クレジットを育て上げたり、
土地開発にのめり込んで焦げ付かせるエピソードにはちょっと違和感を覚えた。
「馬上行動」のエピソードが示す営業肌の人物像からは、むしろ、管理会計思考の
製造畑の古参の部下に対して、営業畑の井植敏氏と財務畑の古瀬氏や野中氏とい
う、製造 vs 金融という図式を思い浮かべた。

その点、井植敏氏が政治的な要請からフィリピンに建設を決めた半導体工場を、半
導体部門の責任者の吉江氏が絶対に不要なもの断じるエピソードが紹介されていた
だけに、その対立軸をもっと掘り下げて欲しかった。
そうすることで、創業者の井植敏男氏が井植敏氏を後継者として不安視したのを受
け、井植家の大番頭とも言うべき黒川氏が立派に鍛え上げることを請合うエピソー
ドとのギャップが埋まるのではないか。
つまり、同じ黒川氏に鍛えられた吉江氏と井植敏氏との思考のギャップは、本当に
井植敏氏が創業家だからということで生じてしまったのだろうかということだ。

そして、そこにキヤノンの有利子負債を削減して業績を回復させた御手洗富士夫氏
と、有利子負債を増やしてしまった井植敏氏との根本的な計数感覚の違いを疑う。

この本は、多少なりとも三洋電機の裏側を知る私にとって、読み物として退屈せず
に読み通せた。
しかし、そこから何か教訓を導き出そうとすると、ちょっとストレスを感じる。
「創業家」という切り口で良かったのだろうか?
よって、星4つとする。
引用元:本当に創業家にありがちな悲劇と片付けていいのか
三洋電機 井植敏の告白 (日経ビジネス)
いろいろなエピソードや関係者の証言を交え、三洋電機や井植敏氏の生い立ちや
人となりにも触れ、井植敏氏から寄せられた回答に突っ込みを入れてさえいる。
また、創業家とメインバンクが係わったエピソードにも触れ、メインバンクの果た
した役割に言及し、批判してもいる。
日経ビジネスがこんな本を出版するのかと思わせる、単なる「よいしょ本」にはな
い読ませる本になっていると思う。

しかしながら、単に三洋電機の低迷は創業家とメインバンクが招いたというテーマ
であるならば、逆に創業家でない世の企業経営者への「よいしょ本」ではないのか
と勘ぐりたくなる。
そして、三洋電機の関係者なら、紹介されているエピソードを自分の記憶で組み合
わせながら読み解く面白さはあるが、三洋電機のことをあまり知らない読者にはス
トレスが大きいのではないだろうか。

また、登場する三洋電機の従業員が「飯炊き親父」だとか、ちょっと人の良い、あ
る意味で経営者に都合のよい、職人気質の人々に偏っている印象を受けた。
その点、現場の社員の生々しい声や怨念に欠ける内容ではないだろうか。

当時、絶頂期を通じて抱えていた1兆4千億円とも言われた有利子負債の存在が社
員に極秘であったワケではない。
それは中越地震での半導体工場への被災が凋落への引き金ではないという書き方で
描かれてはいる。
しかし、定年を迎えた多くの古参の社員たちが、巨額の有利子負債を減らせないで
いる創業家とメインバンクに恨み言を残し、あるいは企業年金の存続を危ぶみなが
ら去っていったのではないだろうか。

そこには、直接原価計算でコストを把握して利益を捻り出そうとする現場の社員た
ちと、全部原価計算での数字のマジックを恣意的に用い、余計なことに投資を続け
た経営陣という、日本の製造業における普遍的なテーマが隠れていたのではないだ
ろうか。

井植敏氏が副社長に招いた住銀出身の古瀬氏の話に絡んで、井植敏氏が財務コンプ
レックスだという話が紹介されていた。
しかし、そんな財務コンプレックスを持つ人物が三洋クレジットを育て上げたり、
土地開発にのめり込んで焦げ付かせるエピソードにはちょっと違和感を覚えた。
「馬上行動」のエピソードが示す営業肌の人物像からは、むしろ、管理会計思考の
製造畑の古参の部下に対して、営業畑の井植敏氏と財務畑の古瀬氏や野中氏とい
う、製造 vs 金融という図式を思い浮かべた。

その点、井植敏氏が政治的な要請からフィリピンに建設を決めた半導体工場を、半
導体部門の責任者の吉江氏が絶対に不要なもの断じるエピソードが紹介されていた
だけに、その対立軸をもっと掘り下げて欲しかった。
そうすることで、創業者の井植敏男氏が井植敏氏を後継者として不安視したのを受
け、井植家の大番頭とも言うべき黒川氏が立派に鍛え上げることを請合うエピソー
ドとのギャップが埋まるのではないか。
つまり、同じ黒川氏に鍛えられた吉江氏と井植敏氏との思考のギャップは、本当に
井植敏氏が創業家だからということで生じてしまったのだろうかということだ。

そして、そこにキヤノンの有利子負債を削減して業績を回復させた御手洗富士夫氏
と、有利子負債を増やしてしまった井植敏氏との根本的な計数感覚の違いを疑う。

この本は、多少なりとも三洋電機の裏側を知る私にとって、読み物として退屈せず
に読み通せた。
しかし、そこから何か教訓を導き出そうとすると、ちょっとストレスを感じる。
「創業家」という切り口で良かったのだろうか?
よって、星4つとする。
引用元:

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